認知症の父と暮らす上で心がけている事
父はアルツハイマー型認知症です。物事をすぐに忘れてしまうほか、日常生活の中の動作を仕方を忘れたり、私たちが無意識に行うことも忘れます。
例えばご飯の時。いつものように白いご飯、焼き魚、お味噌汁、漬け物を父の前に配膳してお箸を渡すと、おもむろにお箸をテーブルの上に置きました。そして黙ったまま止まるんです。
「どうしたの?食べていいよ。食べたくない?」と聞くと、
「食べるよ。食べるから」と言い返してきます。でも、なんだかモゴモゴしてお箸を持とうとしない。
そうなんです。どうやって食べればいいか忘れてしまったんです。正確には、お箸を使うという事を忘れていました。
ですが、ここが認知症の不思議なところ。お箸の使い方を忘れただけなら、手で食べ始めるお年寄りもいます。
しかし、父は食べたいけど食べなかった。つまり、ご飯は手で食べるものじゃないってことは覚えていて、でもどうやって食べていたかを忘れていたんです。
食べたいけどどうやって食べたらいいかわからなかった。そんな葛藤を繰り広げていたんです。
その後、親である父にお箸の使い方を教えるっていう、なんとも異様な光景を繰り広げて、どうにかお箸の使い方を思い出してくれました。
このように、認知症とは全てを忘れてしまうのではなく、記憶の一部分だけを断片的に忘れてしまうっていう症状がとても多いんです。
認知症を「ボケ」「物忘れ」「痴呆」などと同じようにとらえる人もたくさんのいますが、その現実はもっと独特なもので、本人のことをよく知っているからこそ見えてくる脳の病気なんです。
そんな事もあって、私が心がけているのが「本人の気持ちになってみて考える」という事。認知症の父の行動には必ず理由がある。その理由をしっかり理解してから対応するようにしています。
イライラしてしまうことはもちろんあります。というか、ほとんどです。でも、怒られる本人の気持ちはどうなんだろう?と考えれば、1番辛いのは認知症の父だったりするんです。
介護は辛い。でも、そこには当然される側の気持ちもあるって事も忘れちゃいけないと思います。